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やっと・・・帰って来れた!

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20日午前 海京

中心街から少し離れた路地裏から煙がモクモクと立ち上る
そこには二人の男女が居た
青年は顔に4つの大きな傷跡があり腰まで伸ばした髪を真ん中辺りで結んでいる
女は背が低く、燃えるような赤毛のポニーテールと釣り上がった目が妙に合っていた

「まぁとりあえず、合格かな?」

「こんな所で試験すんなよコノヤロー...」

路地裏で服も体もボロボロになっている青年、ハイコド
服がいくらか破けているがすでに傷はふさがっている女、緋音

1ヶ月の修行の見極めとして緋音はわかれる直前に試験と言うなの殴り合いを開始した
始めのうちはやじうまも何人かいたが、飛び交う魔法や衝撃波を見た途端逃げ出してもはやこの場にはハイコドと緋音しか居ない

ハイコドは魔力回復作用があるタブレットを幾つか口に放り込み丁寧さとか優しさなんて微塵も感じられないほど豪快に噛み砕いて飲み込む
そのまま両手から回復魔法を発動させ自らの傷を癒していく

緋音は元々目立った損傷が無いため自動回復魔法だけで十分に回復できた
回復しているハイコドを横目に見ながら左腕につけたお世辞にも女性物とは言えないゴツイ腕時計の秒針を見ると顔色が一気に青ざめていった

「や、やべぇ・・・」

「何がさ」

「パラミタ行き・・・・あと5分で発車する」

その瞬間二人は同じ顔で走りだした
普通の人間ならここから天沼矛まで20分はかかる
だが二人は契約者だった
契約者はそうなった瞬間から基本的な身体能力は常人を逸脱することになる
言うならばオリンピックのすべての競技で記録を残せるほどに
長距離、短距離、幅跳び、潜水・・・・契約者各自が訓練すればするほど一般人からはかけ離れていく
まして一人は生身でイコンと戦闘できるほどの身体能力

二人が通り抜けた道には突風が巻き起こりあちこちで悲鳴が聞こえていた

「「いっそーーーーーーげーーーーーーーーー!!!!」」





天沼矛、パラミタ行きの列車へ多くの人が乗車していく中一つの狼耳がピコピコと可愛らしく揺れていた

「もう・・・早くしないと遅れちゃうよー」

ちらちらと駅に設置されている大型時計の長針をサファイアのような瞳でチラチラと見ている
腰まで伸ばした髪を赤いリボンで先端部を纏めて人の迷惑にならない程度にふさふさと触れば気持ちよさそうな尻尾をゆらして女の子は婚約者とその母親を待っていた

「ソランちゃんだけでも先に乗っていたら?」

その隣には170と少し位だろうか?
短く切りそろえた黒髪、ふちなしメガネの奥に優しそうな目をした男、青丹は隣にいる女の子に聞いていた

「あ、大丈夫です。あと2つほど乗り過ごしても今日中にはツァンダには着きますから」

ソランと呼ばれた女の子はハニカミながら青丹に言った

「それにしても、ありがとう本当なら3日早くソランちゃんだけなら帰れたのに」

「ふふ、そんなことしたら私もハコも寂しくて暴れますよ?あとよっきゅ・・・」

そこまで言ってソランは青丹に口を塞がれた
んーんー!と口をもがもがと動かして漸く解放された

「そういう事をこんな所で言っちゃダメだよ」

「あ・・・・やだ私ったら」

ソランはつい滑らせそうになった言葉を思い出して赤面してうつむいてしまった
ソランからすれば1ヶ月間人目を気にせず堂々とイチャイチャしていたせいですこしばかり感覚がずれたままだった

そしてふと駅の入口が騒がしいことに気がついた

「どけーてー!」

「お客様!お荷物はお預かりしますので!落ち着いてください!」

「あとー二分ー!」

ハイコドと緋音だった

「・・・義理父さん、私先に乗りますね」

「うん、気をつけてね」

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「ソラー!まってー!」

「コイツも乗せろー!」

「お客様ー!」

結局ハイコドは次の便に乗ることになった





空京 中心街

ハイコドは頬を風船のようにふくらませてむくれているソランのご機嫌取りをしようと躍起になっていた
それもそのはず、12月も後半ただでさえ寒いのに更に一人で居たソランにナンパする男が数人いたのだ
そのたびに光白椿を抜いて炎型のオーラで威嚇して追っ払ったが
(色は赤紫色、要するに凄まじく怒っている)

「ごめんよ・・・本当にごめん!」

「ふーんだ!」

完全にそっぽ向いて膨れてしまっている
こうなるともはやハイコドは謝るしか方法はない
というのは以前のハイコドの話で今は対処法があったりする

「それじゃ、あそこのお店行こうか」

「むー、・・・!行く行く!」

ハイコドが指さしたのはからあげの屋台
ソランは無人島生活で鶏肉にはまってしまい大の鶏肉好きになってしまった
無人島内でも何度か機嫌が悪くなったことがあったがその日の晩御飯が鶏肉だとすぐに機嫌が良くなったりもした

丁度揚げたてだったのでソランは唐揚げを少しずつ啄むように食べていく

「ソラ、おいしい?」

「うん!やっぱり塩焼きとかもおいしいけど唐揚げもおいしい!」

すっかり上機嫌だ
これであとは帰るだけ
ハイコドがソランの手をそっと握るとソランもうれしそうに握った
そのままお互いの尻尾を絡めて寄り添って二人だけの固有結界発動
この時期恋人を探そうと躍起になっている独身の男性女性に殺気を飛ばされたが二人の固有結界に阻まれることになった





ツァンダ いさり火

エクルは現在居候として店舗スペースの掃除をしていた
現在は使われていないこのスペースは今ではファルコンボードやバイク等を置くスペースになっている

「まったく、だれじゃこんな趣味が悪い飛行ユニットに乗るのは!鳥みたいで虫唾が走るわ!」

使用者が聞いたら涙目物である、ひでぇ
口にマスクを付けてはたきでパタパタと埃を落としながらエクルは愚痴っていた
しかし働かなければこの寒い外に追い出されてしまうので仕方なくやっていた
ぶつぶつと文句を言いながら箒、雑巾、水拭きをこなしていくとカラカラと音を立ててシャッターが上がっていった

たしか風花が買い物に行っていたはずなので風花だと思ったが見えてきた足は二人分だった
すぐさま風花では無いと思い飛空艇の影に隠れることにした

「変わらないなぁ・・・」

「そりゃ1ヶ月じゃ変わらないよ」

一人は顔に沢山の傷跡がある男
もう一人は銀髪で女
二人とも耳と尻尾が生えているから獣人だろう
信は作業部屋にいるから気づかない・・・・
そう考えたら箒を持って女の方に飛びかかっていた

「うりゃー!」

女は迫ってきた箒を片手の平で受け流してもう片方の手でエクルの右肩を軽く押しながら足を払い地面に抑えつけた

「うわー!ど、泥棒なんかにわらわは負けぬぞ!煮るなり焼くなり好きにしろー!」

そう言いながらじたばたと暴れたため女はエクルを離した
エクルはすぐさま飛空艇の後ろに隠れて二人の様子を伺う

「え、えっと・・・泥棒だって、ハコ」

「どうしようか・・・」
二人の男女、ハイコドとソランは自分の家に居た女の子にいきなり襲われて撃退したらいきなり泥棒だと言われて困惑した
もしかしたら風花と信に何かあったのではないか?
この子が今この家の住人なのではないかと

「とりあえず落ち着いて、君はここに住んでいるのかい?」

「ぐすっ・・・居候じゃ、風花と信がこの家の主人じゃ!」

風花と信の名前が出てきて二人は安心した
とりあえず目の前で少し震えている女の子の事以外はそこまで変わっていないらしい
そこに外から走ってくる音がした
姿が見えるとそれはまるで毛玉のようにもこもこしていた

「おかえりなさい!ハコ兄様!ソラ姉様!」

毛玉もとい、獣化した風花はハイコドとソランに突撃した!
かなりの勢いがあったためそのまま押し倒されてしまう

「風花!久しぶりだね・・・あぁ・・・もふもふだ~」

「ほーらよけてよけて」

「あ、はい・・・」

風花は自分がしたことが子供っぽく感じたのかそそくさと二人の上から降りた

「・・・のう風花、その二人はだれなんじゃ?」

自分をたすけてくれた恩人が泥棒だと思っていた二人と親しくしている所を見てエクルは風花に聞いた
風花はハイコドとソランが自分たちのパートナーであること、修行でここ一ヶ月間パラミタに居なかったことを説明した

「ほう・・・・てっきり風花と信の家だと思っとったが・・・言われてみれば部屋が2つあったしのう」

「とりあえず誤解が解けたみたいでよかったよ、えっと名前は?」

「わらわはエクリィール・スフリントじゃよろしくのハイコド、ソラン!エリィでもエクルでも好きな様に呼んでくれ!」

「わかったわ、エクル」

「それじゃ一旦家に入ろうよ、信にも帰ってきたこと教えないと・・・それに手も冷たいし」

ハイコドがそういって初めて女子三人は自分たちの手も冷たくなっていることに気がついた
今日はとりあえずゆっくり休もう、ハイコドはそう考えた
事実、夕飯後にソランがいちゃつくためにハイコドの部屋に行くとハイコドは倒れるように眠っていたため布団をそっと掛けて、そのまま四季の部室へと向かった
懐かしい人達に会うために


おしまい
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