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ツァンダ東に森のなかにある集落、ジーバルス一族は主に鍛冶で生計を立てています。
ここ最近のビッグニュースと言えば10数年前に亡くなった魔眼持ちの女の子が生き返ったことです。
さて、ここで男たちはあることを考えました。
・・・さぁ、どんなことでしょう。

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ジーバルスの集落の家はログハウスが基本です。
幾つか現代風の家がありますが住み慣れた土地の木々で作った家のほうが加護の魔術等が乗りやすいとの理由であまり定着しておりません。
さて、そんな豆情報は隅っこに避けておいて。

集落の武道場、その中で多くの屈強な男たちが一人の女性の技を血眼になって見ていました。

「そして、左腕を返して爪を突き立てる!」

一つ一つの技が終わる度に男たちはおおっ!と感嘆の声を上げます。
男達の中心に居るのはニーナ・ジーバルス、生き返った女とか初代に認められた女と裏で言わてたりしていますが正確に言うと「平行世界のニーナの欠片を集めて固めた存在」なので亡くなる前のニーナとは全くの同一人物とは言えない・・・のですが、説明するのが面倒臭いので生き返ったと言うことにしています。

「ニーナちゃん!他には十代目フィオからどんな技を教わったんだ!?」

「おい、それより五代目ニーナが使ったと言われる槍術が先だ!」

「馬鹿野郎!他の代様より初代様の魔術にきまっているだろうが!」

「ちょっと皆落ち着いて・・・」

わーわーと騒がしくなってきた男たちにニーナもタジタジです。
そもそもなぜこんな状態になっているのかというと、ニーナ曰く。

・ジーバルスの魔眼持ちは死んでもナラカには行かずとある場所に封じ込められ続ける
・なので約十年近く一族の中で伝説と言われた技を先代達に教わりや話の真実を聞かされた

という訳でジーバルス一族にとってニーナは言わば人間国宝なのだそうです。
なので今日も今日とてニーナから技を一つでも教わりたい男たちはこうして集まっているのです。
・・・仕事がなくて暇だからではありません、これもお仕事なのです。

賑わう道場にドでかい声が響きます。

「ちょぉぉぉぉぉぉぉっと、まぁぁぁぁぁったぁぁぁ!!!」

無駄にでかい声が道場の中で反響し男たちは思わず狼耳を塞ぎ声の主の方を向きます。
煤まみれでマッチョなおじさま達がズシズシと男たちに近づいてきます。

「なんだ、ギンジさんたちかよびっくりさせんな」

現れた煤まみれの男達はジーバルス一族の中核、鍛冶師のギンジさんとその他鍛冶師、見習い含め10名。

「えぇいどけいどけい!むさっ苦しい男になんざ興味ねぇ!」

「んだと、コノヤロウ!」

口ではそう言いつつも素直に道を開ける若い衆。
ギンジは手で軽く礼の形を取るとずんずか進み、中央に居たニーナの前で立ち止まる。

「どうかしました?ギンジさん」

「・・・」

ギンジはニーナのをじっくり見ます。
190はあろうひげもじゃのおじさんが女性をじっくり見る図はなんだかアレです。
後ろにいる鍛冶師も習うようにニーナを見ます。

「ウチの孫と結婚しない?」

「何言ってんだこのエロじじい!」

「族長候補になんてこと言いやがる!」

メッタメタに若い衆にスキンシップという名の乱打を受けますが物ともせず続けます。

「と言うのは冗談で、ニーナちゃん・・・獲物はどうする?」

「獲物・・・ですか?」

「おうよ、まだ何年も先とはいえ仮にも族長なんだ。いいもん作ってやらねぇとなぁ」

「え?いいんですか?」

「あたぼうよぉ!」

ニーナは少し考え、それじゃあとつづけた。

「直刃の剣がいいです、細剣って言うほどじゃないけど細めの」

「ふむ、てっきり刀かと思ってたんだが・・・どうしてだ?」

「刀は妹が使っていますし、何より守りたい人達が脳筋なので後ろから支えるポジションじゃないと・・・それには重い武器は使えないので」

ニーナの口から脳筋という言葉が出た瞬間若い衆からくすくすと笑い声が聞こえました。
幸せ者めとか色々な言葉が聞こえます。

「そうかそうか・・・・よーし」

そこで一息吸い、ためてから後ろの鍛冶師達に叫ぶ!

「いいかてめぇら!己の魂を鋼に込めろ!鉄の頭を柔らかくしろ!コストを考えるな!ジーバルスの全てを金属に込めやがれぇ!!!」

「うぉういぇぇぇぇい!!」


それだけ言うと鍛冶師集団は煤や埃をまき散らしながら道場からあっという間に居なくなってしまいました。
ポカンとするニーナとくすくす笑い続けている男たちだけが道場に残りました。

「えっと、どういうことなのかな?」

たまらず隣に居た青年に聞きます。

「あぁ、ニーナちゃんは未来の族長だろ?代々の族長が使った武具って後世に語り継がれるじゃないか、皆自分の作った武器を後々に残したいんだよ」

「なるほど」

それなら納得、と舞い上がった煤に咳をしながらニーナはつぶやくのでした。


おしまい















































______________________________

「これでいいのか」

「えぇ、上々よ・・・よしよし、おいしいですか~」

ギンジは道場の裏に隠れていた女に小さくつぶやく。
女は赤ん坊に母乳を与えながらまるで闇を閉じ込めたような眼でギンジを見ている。

「・・・男の目の前で赤子に乳を与えるのはどうかと思うぞ」

「あんたに見られる程度どうでもいい」

まるであんたは虫けらと同じだ、と言っているかのような冷たい声

「おまえ、このままで「黙りなさい、何度も言わせるの?あなた達がお母さんに、お父さんに、何をした?」

言葉を遮られても何もいうことが出来ない、たかだか二回りも三回りも年下の女に。
ギンジは数週間前の事を思い出す。
突然やってきた、同じ一族の女

『ここで掌を返すのかあなた達は』

『私達の結婚式に祝いも何も入れなかった年寄りどもが』

『私は許さない』

『お姉ちゃんが死んでその後にこそこそやっていた事を』

『動脈を斬られたくなければ言うことを聞きなさい・・・大丈夫、族長からの話って事で来るから』

『夫やパートナーに言えば、ジーバルスの名を消すからな』

只々後悔する 俺達はとんでもない獣を作ってしまった と。

「大丈夫よ、これまで通り仲のいい人として過ごすから」

一つだけ質問をする。
もしも答えが求めないものだとすれば今この場で始末しなければならないかもしれない

「一ついいか、お前はジーバルスをどう思っている」

女は即答する。

「愛すべき誇り高き狼の一族、私にもその血が流れている。おかしな事は極力しないわ・・・だから殺気をしまいなさい、周りに気づかれてしまうわ」

「・・・いいか?信じるぞその言葉」

「えぇ、この里の匂いが好きだもの・・・狼の姿で駆けまわり、鹿を仕留め、皆で食べる肉の味・・・鋼鉄を打つ小気味いい音、炭がぱちぱちと燃える音・・・男たちの掛け声・・・刀が仕上がる度にする祝い、炎の神へ捧げる祭、その全てが好きよ」

でも と女は続ける。

「それとこれは別、お母さんとお父さんを一時的にとは言え追い詰め結婚式に一切出なかったあなた達上の人間を私は許さない、認めない、お姉ちゃんがこうして生を受けて掌を返した貴方達をユルサナイ」

「だから♪お姉ちゃんの剣・・・よろしくねギンジさん」

すぐに歳相応の明るさに戻り、服を戻して赤子の背中を軽く叩きゲップさせる。
その姿は母親そのものだった。
女は軽く会釈してその場をゆっくり去っていった、まるでこれから散歩でもするように。
その心のなかではドス黒い物を抱えているというのに。

「それでいいのか、ソラン」

 
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