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ものすごく久しぶりの更新というか、出来上がっていたSSを数ヶ月あげ忘れていたという。


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2023年10月末
ハイコドの妻ソランとその姉ニーナの生まれ故郷であるジーバルス一族の里にももうすぐ秋も中頃、そして吹き荒ぶ冬の季節が着々と近づいていた。
そこに雑貨屋の商品(ナイフとか包丁)を納品してもらうため来ていたハイコドに若い獣人・・・よくハイコドと組手をする青年が声を掛けた。

「なぁハイコド、里の近くに封印されてるデカイ狼の話を知ってるか?」

「いや、初耳だな」

「なんでも数代前のフィオ様が封印した暴れん坊らしくてな、すごい力を持っているらしい」

「ほぅ」

「ハイコドやソラン、ニーナ様なら契約者だし従えたり出来るんじゃないか?すごい力と言っても昔の事だし、俺達一般の奴らの基準だからよ」

「なるほどね、良いこと教えてもらったよありがとう」

「いやいや」

考えてみればソランやニーナには家族というかパートナーの様な親しい狼が居るがハイコドには居ない。
いざという時の事を考えれば居たほうが良いに決まっている・・・と言う事も考えたが何よりも狼を従えているというのはジーバルスの一員らしくもあるのでぜひともその狼に会ってみたかった。
ハイコドは青年に教えてくれたことに礼を言い、族長の元へと走った。





族長の家。
里のほぼ中央にあり、他の家と大きさは左程変わらない2階建てのログハウス。
かなり昔からあるらしく代々の族長はこの家で暮らしているらしい。
ちなみに次期族長や族長の補佐はこの家で勉強したり仕事したりする事になっている。
そんな家でハイコドはお茶をすすっている族長に先ほど聞いたことを話した。

「と、言うわけなのですが」

「ん~ぬ、あのじゃじゃ馬・・・じゃのうてじゃじゃ狼を手なづけたいと言うのか?」

「知っているんですか?」

「知っとるも何も、20年近く前に家の番犬代わりにでもしようかと封印を解いたらワシを喰おうと襲いかかってきたから再度封印しただけだ」

そりゃ誰だって怒るわ・・・と思ったことは心の中だけに仕舞っておく。

「俺、その狼と話というか捕まえてみたいんですけど・・・できますかね?」

「まぁワシよりもハイコド君の方が強いしなぁ、いいんじゃね?イケルイケル!あ、場所だけど君ん所の家から~」





「んで、来てみたけど・・・これか?」

ハイコドの目の前には背丈ほどはあろうかという巨大な黒曜石の石碑。
錆びた鎖で縛り付けられていて鎖が交わっている所には一枚のそれらしい札が貼られていた。

「とりあえず、じゃじゃ馬らしいし準備運動しておくか」

オイッチニ、オイッチニと10分程体を動かして温めた所で札を手刀で切り捨てる。
瞬間、鎖がはじけ飛び黒い液体のようなモノが地面に染み出す、それに触れないようハイコドは離れ様子を見る。

『おい、俺様に何の用だガキ』

脳内に直接入り込んでくる声。
テレパシーとも違う、まるで魂其の物に語ってきているような感じだった。
地面に染みだした黒い液体が石碑の上で集まったかと思うとソレは狼の形になって石碑の上に立っていた。

「俺はハイコド・ジーバルス、貴方の噂を聞いてやってきた者だ。少し話をしてもいいかな?」

ハイコドが今まで見た中で一番大きな狼、体長3mは軽く越している。
闇の様で見つめるだけで吸い込まれていきそうな黒い毛並み、軽く噛むだけで堅い猪肉も噛み切りそうな牙、触れるだけで木々をなぎ倒してしまいそうな爪。
そして体毛のように真っ黒な瞳がハイコドを映し出していた。
・・・だが、ジーバルスと聞いた瞬間から明らかに狼の表情が変わっていった。
明らかに、絶対、誰が見てもその表情は。

【怒り】

『今度はガキか!ふざけてんじゃねぇぇぇぇ!』

おもいっきりドスの効いた声でハイコドに鋭い爪を振り下ろす。
初めから戦闘も考えていたハイコドは難なく避ける。

「・・・何で怒ってるんだ?」

『黙れ!テメーらこの前俺を家の番犬にするとか言っただろうが!断ったらまた封印しやがって!』

ある程度予想出来ていた事なのでとりあえず安心する。
どうやら族長が来た時から20年近く経過していることをこの狼は知らないらしい。
とりあえずまずは誤解を説くことにした。

「あー、ソレは現在の族長。しかも20年近く前の話だな」

『あぁ?20年?・・・おいガキ、ちょっと説明しろ』

「分かった、何から話す?」
(ふむ、性格自体は荒々しいが話が通じないわけじゃないな。これならまだ楽そうだ)





ハイコドが今の時代のシャンバラについて説明する度狼はへー、ほー、ふーんと相槌を打ち、尻尾をユラユラと揺らしていた。

『かー、色々ありすぎて訳わからんな』

狼は前足で自分の顔をぽりぽりと器用に掻いている。

「まぁ俺もよく分かっていないくらいいろんな事が起きてるしな・・・」

『んで?お前は俺をどうしたいんだ?番犬とか言ったら噛み殺す』

「しないよ、俺と一緒に来て欲しいんだ」

『なぜだ?』

「今の世界を知らないって事を聞いたら連れて行きたいというか、冒険したくなった。さっきの跳びかかりを見ればわかる、あんたはそこらの狼とは別格だ。どんなヤツが相手でもそう簡単に死なないし・・・何より楽しそうだ」

『ふむ、嘘は言ってなさそうだな』

「どうだ?仕事柄でかいモンスターとかいっぱい戦えるぞ?」

『ふぅむ』

狼は目を瞑りうーむと唸っている。
ハイコドは後なにかひと押しがあれば承諾してくれそうだと思ったのでちょっと考えてみようとしたが。

『いいだろう』

「お?」

返ってきたのは了承だった。

『ただし、俺を檻に入れたり自由にしてない時はその首飛ぶと思え』

「それじゃ一先ずお試しで一週間一緒にいてくれよ」

『いいだろう・・・それで決めてやる』

そう言うと狼はハイコドの前でおすわりの格好をするとぴょんとハイコドの影に向かって飛び込んだ。
すると狼は水に入るかのように影に吸い込まれていった。

「おぉ?」

『流石に四六時中貴様の側にいるわけにも行かまい、普段はこうして影の中に潜んで貴様のことを見ているとする』

「んー、わかった。そういえば名前聞いてなかったな」

『んなもの無いな』

「んじゃ考えておくよ」

姿は見えないがハイコドには狼が静かに頷いたように思えた。
こうしてハイコドは新しい仲間を見つけたのだった。






その日の夜、ハイコド宅

「ハコ、風花から今日の売上と来週の入荷予定のメールgひゃん!?」」

ソランは下半身に突然襲った衝撃に思わず飛び上がった。
なんだなんだと下を見てみると。

『・・・・・』

ハイコドの影から大きな狼が顔を自分のスカートの中に突っ込んでいた。

「ハコ、なにこれ」

「あ、こいつは・・・」

『おいハイコド、こいつはお前の女か』

「そうだけど」

『こいつの股から並々ならぬ数の女の臭がする、相手間違えたんじゃないのか』

「余計なお世話よ!!」

『ぐおぉ!?』

「た、たはは・・・」

狼はソランの怒りの拳骨を頭に喰らい涙目になりながらハイコドの影に逃げ込んでいった。
ちなみに後日この狼には【裳之黒】という名が与えられることになったという。
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