忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

3月半ばから終わりの事

拍手

__________



「糞!」

自分よりも20cm近く身長が高い相手の攻撃で地面に叩きつけられそうになり、それを前回りで回避して体制を立て直し相手の懐に飛び込む。
相手はハイコドを近づかせないために前蹴りをするが止まることはなく鳩尾へ蹴りを放つ。
足に伝わる物体を蹴り抜く感覚、骨を軋ませた音。
手応えはあった。

-ザマァミロ-

一瞬勝ちを確信したハイコドだったがこの程度で終わる相手では無いと考えすかさず追撃を加えようとする。
そのために踏み込んだ瞬間、全身・・・正確には両腕、両足の先以外に壁に叩きつけられるような衝撃が襲いかかった。
しまった、そうハイコドは考えた。
アレクのクラスを大太刀を使うことから梟雄か違っても拳聖と予想していたためだった。
しかし今受けた衝撃は拳圧や闘気による物ではなかった。

-継人類かよっ!?-

壁にたたきつけられ、肺の空気が叩きだされ一瞬意識が飛びそうになる。
だが鍛えた肉体があと一歩という所で意識を繋ぎ止める。
体中に酸素を送ろうと荒く息を吸いながら相手の状態を見極めようとする。

この時の風花の、リュシアンの声はハイコドには届いてはいなかった。
数%でも他のコトに意識を分けれるほどの余裕など無かった。

ハイコドに見えたのは渾身の蹴りを叩き込んだにも関わらず、戦闘前と同じ動きで歩きこちらに向かって駆けてくる兵士を弾き飛ばすアレクの姿だった。

-チクショウ...僕の力はこの程度なのかよ-

その直後、首に銃弾を撃ち込まれハイコドの意識は病院の個室にて回復することとなる。





真っ白な四角い部屋の中で二人の人間が存在している。
一人は黒髪の長髪で狼の耳と尻尾を持つ男
もう一人は炎の様に揺らめいて、辛うじて女と分かるシルエットの黒い影

男は部屋の中央でうずくまるように体育座りをして、影は男の周りを跳ねるように動いていた。
影は言う。

『負けちまったな?』

男はそっけなく答える。

「あぁ、そうだな」

影は右手を顎に当て、困ったように言う。

『あいつ、なんとも無いように動いたな』

男はうつむきながら言う。

「・・・あぁ」

影が今度は大げさにやれやれと言いたそうに手を広げて言う。

『いやーあの後あいつらも負けたそうだなー』

男は何も答えない。

「・・・」

影は男の顔を覗き込む様につぶやく。

『おめぇ・・・なんも残しちゃいねぇなぁ』

残しちゃいねぇ、その部分だけをヤケに強調して影は言った。

『おめぇが腕でも足でもへし折っていればその後相手した奴らはもう少しマシだったかも知れないのによぉ」

『これがただの戦闘だったから、ほとんど面識のない女子の奪還戦だったからいいけどよぉ』

影はキシシと笑いながら、男の顔に近づいて薄気味悪く笑いながら、ニンマリと笑いながら

『おめぇの大好きな人を襲おうとしてる奴だったらどーなったかなぁ?』

言い放った。

男の目から光が消える。

瞬間、目の前で愛する者の胸から刃物が飛び出すヴィジョンが脳内に再生される。
自分に手を伸ばし、力尽きてダラリと崩れ落ちる身体。

「ぁ...あぁぁぁぁ!!!!」

ガチガチと歯と歯が小刻みに咬み合って音が鳴る。
体がガタガタと震え出す。

『殺されるだけならいいさぁ、目の前で色々されるかもよぉ?あの美貌だし』

影は更に追い打ちを掛ける。
さぁ、もう少しだ。そう言いたげに

「やめろ...やめてくれ...お願いだ」

男は頭を抱え首を横に振る、目を瞑っても見える光景を振り落とすために。

『だぁいじょぉぶ♪そうならない方法が一つあるぜぇ?』

「あるのか?そんな方法があるのか!?」

男は影にすがりつく、まるで神に許しを請うように。

『かんたんだぁ...おめぇが強くなればいいんだよ、どんな時でもどんな相手でもブチのめすのさ。そうすりゃ変な事になるわけがない、だって誰にも負けないんだからよぉ』

「強く・・・」

『そう、強く』

「ツヨク」

『ツヨク』

「ツヨク』

『ツヨク」

『「ツヨク」』

一言一言言う度に男と影は混ざり合っていった。
影が男を吸収するように。






朝日がカーテンの隙間から溢れる部屋で男が目を覚ます。

指を動かす。

首を動かす。

肩に力を込める。

紐の付いたナイフのようなものが肩甲骨の辺りから皮膚を突き破り、飛び出す。

男は自分の体から飛び出たモノに反応を示さない。

まるで生まれた時からあったと言いたそうに。

最後に口角が釣り上がり、口を開く。

「オレの体だ」

口から出たキシシという笑い声は他の住民には聞こえることは無かった。

PR
RSSフィード iGoogleに追加 MyYahooに追加
Comment
Trackback
Comment form
Title
Color & Icon Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字  
Comment
Name
Mail
URL
Password