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人の記憶なんざ脆っちぃもんだ

思い出?そんなの実際の出来事に比べれば都合よく短くなって
美化されて、大げさになってるもんさ
歴史だってそうだろ?
というか世の中そんなものだ

・・・・・そうだよ、俺の中でも娘との思い出は美化されてるんだろうよ


  -セキハ・ジーバルス-

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「なんなの、この宝箱は・・・・」

気がつけば私は真っ暗な空間の中で大きな宝箱と対峙していた
それこそ部屋四畳半くらいの大きさはあるだろう
ご丁寧に南京錠付きだし

「だけど~♪このくらいの鍵なら~ピッキングで~」

カチャリ と軽い音が鳴り、南京錠は外れた

「中は何かな~」

少し重たいがこのくらいならパラミタ熊にのしかかられた方がまだ重いのだ

「ハイ?」

開けたはいいが宝箱の中には
また宝箱が入っていた
しかも今度はダイヤル式の鍵

「面白いじゃない・・・・やってやるわよ」

そのあとは開ければ次の宝箱が出て、一段階難しい鍵になるというのが続いた
4つ目の鍵を何とか外したがすでにレベル的には限界である

「いい加減中身出てきなさいよ・・・・ハァハァ・・・」

次に出てきた箱は木箱だった
しかし鍵は指紋センサー式、あまりに不釣り合いなその組み合わせに悪いけど少し引いた

「流石にこれは・・・・」

無理と分かっていながら自分の人差し指をセンサーにかざす
ピーーーーッ、カチャ

「うそっ!?」

開いてしまった
まぁ開いてしまったものはしょうがない、早速中身を拝見させてもらうとしますか

「どれどれ~」

金具が錆びているのかギシッギシッと音を立てながらゆっくりと開く
その中身は

「やっほ!」

両手両足を拘束具で止められ、目も封じられている女の子だった
寒気がするニゲロと言っている

だが女の子は自分でまるで初めからなかったかのように拘束具を外していく

「あ・・・あぁぁ・・・・」

顔の布も外された瞬間
頭が割れるような感覚に襲われた

「ぐぁ・・・・ああぁ・・・!」

「やだなぁ、せっかくの再会なのにうめき声しか聞かせてくれないなんて、お姉ちゃん悲しいぞ!」

「はぁ・・・はぁ・・・お姉ちゃん・・・・」

「で、どこまで思い出したの?」

ふざけるな、こっちは頭が割れそうなくらい痛いっていうのに何個も何個も連続で質問しないでよ

「な、名前と・・・・何があったか・・・・くらい」

「そう、まぁいいわ。封印といてしまえばいいんだもん」

封印・・・?そうだ思い出した・・・・私は事故でお姉ちゃんが死んじゃって・・・

「事故?おかしいことを言うね、自分が押した癖に」

「勝手に心の中読まないでよ・・・」

「いいじゃんいいじゃん・・・・さて、全て思い出してもらおうかな」

お姉ちゃん(仮)がそう言うと周りの風景がガラリと変わった

____________

公園があらわれた、ここは・・・
そう、私達とハコが初めてあった場所

「ねぇ、一緒に遊んでいい?」

「うん、いいよ」

ハコはそう言うと私達と遊んでくれた遊び場について教えてもらったりしたっけ
お姉ちゃんがうっかり耳と尻尾を出しちゃった時も受け入れてくれた
ハコはお姉ちゃんとすぐ仲良くなった

「ソランはどうする?」

「ふん!そんな遊びしないよー!子供じゃないもん!」

そうそう、早く大人になりたくて遊ぼうとしなかったっけ
このあとおばさまの家で過ごすことになって・・・
なんて感傷に浸っているうちにお姉ちゃん(仮)が

「はいはい、必要なところだけね」

風景が早送りされていく・・・・もう少し見ていたかったのに

「ハイここ」

川の側で三人で歩いている・・・この時って!

「お姉ちゃん!」

「えっ・・・」

『私』がお姉ちゃんをドンッと押す
私は手を伸ばすけどやはりすり抜けてしまう

「ねぇ、この時どんな気持ちだった?憎んだ相手を殺そうとしたときの気持ちは」

「ち、違う...私はただ仲直りがしたくてイタズラを.....」

「それこそ違う、あんたは私やハコが憎かった、邪魔だった」

「いや・・・・・もうやめて・・・」

「・・・それじゃ、もう少し早送りしようか」

また背景が変わっていく

____________

私がおばさまを呼んでお姉ちゃんとハコを探している時だ・・・

「くそっ!流されているならココらへんなんだが!」

「お姉ちゃん・・・ハコ・・・・」

『私』はただ泣いてばかり・・・・あの時の私は超感覚が使えないことがコンプレックスだった
おばさまは超感覚が使えるようになっていたから必死で探していて・・・

「!聞こえた!こっちだ!」

「うん!」

そのあとはおばさまに抱えられて森の中を走って

「居た!ふたりとも居る!」

「よかった・・・」

お姉ちゃんはハコに寄り添っていた

「.....ソラン?」

お姉ちゃんは『私』を呼んだ、その時は気づいていなかった

「何?お姉ちゃん」

「もう、ほとんど見えないの.....もっと近くに来て....?」

お姉ちゃんのいる地面が絨毯を敷いたように血で赤く染まっていたことに

「おねぇ.....ちゃ....ん....?」

「ニーナ、あんたその体・・・!」

お姉ちゃんの背中は背骨が見えるくらい背中の肉を持っていかれていた

「あのね.....ハコを....守ろうとしたら......こう....なっちゃった....の」

「もう喋るな!!!すぐ病院に連れていってやるからな!」

お姉ちゃんはほんの少し、ほんの少しだけ首を横に振った

「自分の事は....分かるの.....ソラン、来て」

「ぐすっ・・・う、ん・・・・」

「少し早いけど.....誕生日プレ.....ゼント......あげるね」

「えっ・・・・・」

お姉ちゃんは『私』の耳元で

「                     」

と呟いた

そしてお姉ちゃんは動かなくなった

「ニーナ?・・・・ニーナ!!おい、しっかししろ!目を開けろよ!」

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!起きて!起きてよぉ!」

____________

「という訳で、私は死にました」

風景が消えて行く、パレットについた絵の具を水で流すように

「もういや・・・こんなことを思い出させて何になるの・・・・」

もう聞きたくない、こんな悪魔の言葉なんて
耳をふさぐ

「そうそう、気づいてる?その耳も尻尾もついでに目も、私の物だってことに


「えっ・・・?」

どういうこと・・・?わけがわからない

「考えてみなさい、あなたは元々銀の毛で黄色の瞳、私は白の毛に青の瞳。今まで完全獣化して不思議に思わなかったの?人間体と獣体で毛の色が違うことに?」

「そ、それは私がお母さんとお父さんの子だから・・・・」

「どーせ、お母さんにそうやって教えられたんでしょうね。
それにあなたはハコのことが元々嫌いだったの、ハコの事を好きになったのは私が獣化できる方法を教えてから」

???????????????????
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何を言っているの、こいつは

「アホみたいな顔をしているから良い物見せてあげる」

そう言って取り出したのはひとつの手帳、女の子が使うような可愛いデザイン

「これは私の事を忘れ去る前の日までのあなたの日記なの。読んであげる」


10月◯日
今日は北海どうにきてはじめの日、こうえんで男の子とあった
ともだちになったけどお姉ちゃんの方が仲良く遊んでいた

△日
お姉ちゃんとハコがけいやくした。お母さんはかってにけいやくしたらダメだって言っていたのに
お姉ちゃんのばか、ハコのばか

◇日
お姉ちゃんとケンカした、ハコが止めようとしてくれたけどお姉ちゃんのみかただった。大っキライ

☓日
北海どうなんてくるんじゃなかった、お姉ちゃんはハコの事好きになるしハコはお姉ちゃんが好き、私はひとりぼっちだ

□日
ハコなんてどっか行っちゃえばいいんだ、もう顔も見たくない
お姉ちゃんもだ

▽日
ハコが明日遊ぼうって誘ってきた、お姉ちゃんも一緒だって。
驚かしてやろう、うしろから押すとか


「・・・・どう?好きなんて一言も書いていないけど」

「だ、だからどうしたっていうのよ所詮子供の日記でしょ」

コイツは私の顔に近づいて囁くように、けれどナイフのように鋭く言った

「私はソランが憎い、ソランが私を殺さなければハコの隣は私だった!デートもして楽しんで、泣いて笑って!それらすべてをあんたが奪った!!!」

「やめて・・・やめてよ」

「だから私は呪った!その耳を!尻尾を!目を見る度に『ハコの隣に入れるのは私のおかげ』だと分からせるために!」

「お願いだから・・・」

「ハコって元々耳や尻尾に興味があったからね、耳も尻尾もなかったあんたなんて眼中になかったでしょうね!ハコの超感覚だって私と契約した時の状態に戻っただけ!恋する気持ちも自分の姿も姉のお下がりっていうのはどんな気分?

「助けて・・・・ハコ・・・」

「助けに来るわけ無いでしょ! ・・・・・時間か」

「助けて助けて助けて助けて........」

目が覚めてゆく

____________

「夢・・・・じゃない」

私は起きて記憶を整理する・・・・・いや、その必要はなかった
鏡の前に立つ
狼の耳、尻尾、青い瞳

「.....解除」

解除出来たのは尻尾だけ

「解除・・・・消えろ!お願いだから消えて!」

どれだけ耳を消そうと、目を消そうと、消えることはなかった
ふと視線の中に雅刀が写った

「そうだ・・・・そうしよう」

____________

「ソラン!」

僕はソランの部屋のドアを開けた
そこには



自分の耳に雅刀を当てているソランの姿があった




『自責と嘘と瞳』
続く

矛盾も嘘も気づかなければ真実になる
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