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人が死ぬ時それは3つある

一つ、生物として。これは分かるだろ
一つ、人間として。まぁ言うなら死体になって見世物にされる・・・ミイラとかだな
そして
一つ、人から忘れ去られること


これが私の持論さ

    -竜螺 緋音-

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「・・・ニーナ・ジーバルス」

「よかった~思い出してくれたんだね」

目の前の女の子・・・・ニーナは尻尾を振って喜んでいる
しかしハイコドは真っ青になっていた


「どういうこと・・・・・・思い出した限りニナは」
「あの時死んだはず?」

ハイコドの言葉を遮るようにニナは続きを言う

「そう、私は死んだよ」

ずいぶんと軽く言うものだ

「・・・ニナ」
「ん?」


ハイコドは、ニナを強く抱きしめた
そして泣いていた
先ほど感じていた恐怖感ももう無い・・・いや何を自分は恐れていたのだろうか
あるのはまた会えた喜び

「ごめん、ごめんよ・・・・・・・」

「よしよし・・・ハコは時間が経っても弱虫さんだね」

ポンポンとハイコドの頭をあやすようにたたく

「グスッ・・・・それにしてもどうして?死者に会えるっていう機会は終わったはずだけど」

ニナから一旦離れハイコドは聞く体制に入る

「んー簡単に説明するとね、生き返ってなんか無いんだ 今いる私はハコの中のニーナなの」

「んと・・・よくわからない」

「そうだね・・・・いうならハコがその人に対して持っているイメージかな?」

ニナの説明をまとめるとこうだ

・人というのは自分に関わりを持った人に勝手にイメージを持つ
・それは一方的なもの。 例えるなら Aさん→Bさんは親友 だが Bさん→Aさんはウザイ
・だからここにいるニーナはハイコドが『ニーナはこういう人だった、自分に対してこう思っているしこうしてくれる』 というイメージ体である
・でもってハイコドの記憶の中なのでニーナの知識はどんな頑張ってもハイコドの知っている範囲の事しか知らない、ニナの本当の考えを知ることはできない

ということ

「それなら分かるよ」

「でここから本題なの、ハコはとある事で私の事を忘れましたさて何が理由でしょう?」

今ハイコドが自分自身でニーナについて思い出していることは
・ソランの姉
・自分の初めてのパートナー
・ニーナはすでに死んでいる

この3つだけ これから分かることは

「パートナーロスト」

「正解、私が死んだ時のハコのロスト内容は 『私に関することを一切忘れる』と『身体能力の急激な低下』」

ハイコドがニーナの事を忘れていたのは一つ目、パートナーロストをしても残るはずの身体能力が無かった理由は2つ目だろう

「一旦ストップ!」

「何?」

「ニナが僕の記憶の中の事しか知らないならわざわざ言わなくてもいいんじゃ・・・・・あっ」

さっきニーナはこう言っていた
 封印
と言うことはこのニナは自分に全てを思い出させるためのシステムのようなものではないのかと

「分かったようでよろしい」

・・・・・なんだか見た目が10歳児なのにこういう言い方だからなんかムカツク
と考えたが閉まっておく

「で、初めから思い出す?」

ここで言う初めとは ソランやニーナと出会ってから という意味だ
ハイコドはコクと頷く

「うん、それじゃ見ていこう私たちの出会いを」

____________


周囲の闇が消えていき新しい風景が現れる
ここは見覚えがある、北海道のとある街のとある公園
周りは木々で囲まれているが整備されているため等間隔に木が生えている
川もあり、釣りや水遊びだってできる
ちょうど10月頃・・・・・


あの時は小学校で友達もいなくて一人で公園で遊んでいた・・・・

「なつかしい・・・・」

「そうだね、ここから始まったものね」

長期旅行で北海道に来ていたジーバルス家、親に遊んでいいと言われたソランとニナが声をかけてくれた
小学生初めだとまだ男子女子の壁も薄い
僕らは一日中遊んだ
僕が二人に遊び場を教えて、追いかけたり、かくれんぼをしたり
遊んでいる途中でニナが隠していた耳や尻尾を見たときは少し驚いたけどそれよりも可愛いと思った
今と違う点といえばソランが耳や尻尾を出していなかったのと虹彩が黄色ということぐらい


「思えばあれが初めての地球人以外を見た時だっけ・・・」

そのあとミントさんやセキハさんが泊まる宿がない、ということで僕が母さんに泊めてほしいって言ったら
『獣人なんて珍しいからね!尻尾触らせてくれるなら何日でも泊まっていきな!!!』

「・・・とか言ってたね」

「うん・・・私びっくりしたよ・・・・・」

二人してぽりぽりと頬を掻く

「そろそろだね・・・」

「うん」
____________

灰高登 7歳 ニーナ 10歳 ソラン 8歳


「どうしたの?ニナちゃん」

灰高登はニーナに森の中に来てと呼ばれた
今までニーナだけと話すということが無かったので少し疑問に思ったが
気のせい気のせい、と思うことにした

「んとね・・・・(ごにょごにょ)・・・・」

「?」

「契約・・・しない?」

ケイヤク、灰高登はうーんと思いだしてみる
母親に聞いたときは
ずっと、一緒に居たい人とすること、とだけ教えられた
緋音自身この時はそこまで詳しくなかったしワイドショーで聞き流した程度だった

「うーん、いいよ!」

「いいの・・・?じゃあ」

ニーナはゆっくりと灰高登に近づき灰高登の前髪を分けて

「......契約」

静かに額にキスをした
その瞬間灰高登の虹彩が青色に変わり、狼の耳と尾が現れる
だがその変化に気づくとかという問題以前に

「プシュ~........」

真っ赤になって気絶していた

____________

「おでこにキスくらいで情けない・・・」

ハイコドは見ているこっちが情けないと言わんばかりに顔を赤くする

「この次だね、狂うのは」

ニーナは少し風景を早送りにする
時間にして10分ほど進めて、森の中から灰高登とニーナが出てくる所

____________

「お姉ちゃん、契約したの?」

ソランが公園の入口のベンチで待っていた

「ソラン・・・?」

灰高登は尻尾を振りながらソランがどこか具合が悪いのかと心配する
・・・的外れなのは分かるであろう

「バカッ!」

ソランが持っていたジュースの空き缶を灰高登に投げつけて命中
灰高登はいきなりの痛みにすこし涙目になる
ソランはそのまま走り去ってしまった
-この気持ちは何なのだろう-
 自分の心の中で渦巻く感情に気づけなかった

それから数日、ソランとニーナは喧嘩をすることが多くなった
顔を合わせれば口喧嘩ばかり
そのせいで親にも灰高登とニーナが契約したことがバレてしまった
もちろん大目玉、親からすれば契約の副作用パートナーロストの心配なのだが本人達はそのことをよくわかっていなかった

そして運命の日

____________

「ここからはハコが気絶してた部分や主観のせいで音だけの時もあるからね」

ハイコドは静かに頷き、目の前で訪れるであろう光景を見る覚悟を決めていた

____________

気まずい雰囲気
この状態を言葉にするならこれしか無いだろう

灰高登、ソラン、ニーナの三人は公園の川岸を歩いていた
灰高登としては二人に仲良くしてもらいたかったため考えた結果また遊ぶという考えになり、二人を公園に引っ張り出したのだ
しかし前日の雨で地面は少しぬかるんでいるわ、川は勢いが強くなっているわであまりいい場所とは言えなかった

「・・・・・フンッ」   「・・・・フンッ」  「・・・・・」

どうしたら二人は仲直りしてくれるのだろうと考えている時に

「キャッ!」

後ろのほうでニーナの短い悲鳴がしたので振り返る
そこには

「お姉・・・ちゃん・・・!」

川に落ちそうになっているニーナの腕をソランが掴んでいた
慌てて灰高登もニーナの腕を掴み、引っ張り上げようとする

「ニーナ!」

「うぅ・・・・」

この時三人が大人だったら引き上げれていただろうが子供では引き上げることは出来なかった
持ちこたえるにも限界がある
しかも

「うわっ!?」

地面が前日の雨でもろくなっており、灰高登も落下してしまう

「お、も、いぃ~~~~~!」

ソランは二人分の体重をさせないといけなくなる
今この状態で助かるにはどうすればいい
どんなことが一番いい状態なんだろう

ニーナが口を開いた

「ソラン、落ち着いて聞いて」

「な、なに!」

「このまま手を離して、お母さん達を呼んでほしいの」

「えぇ!?」

まさかの案にソランより早く灰高登が反応した

「それじゃ、お姉ちゃんもハコも流されちゃうよ!」

コクコクと灰高登も頷く
ニーナは軽く深呼吸をして言い聞かせるように

「いい?ソランももう限界だと思う、このままだと三人とも川に落ちちゃうし助からない」

「・・・・」

「でもここで私達が落ちて、ソランが走ってお母さん達に助けを呼べば助かるかもしれない・・・大丈夫、私もハコも契約者だよ?流されたくらいじゃ大丈夫大丈夫!」

必死にソランを励まそうとするその言葉も所々震えている

「それでいい?ハコ」

「・・・うん」

けれど、ソランはそう言われて手を離せるほど大人ではない
そしてソランの限界が近づいてきた

「ごめんねソラン・・・」

ニーナはソランが掴んでいる方の腕を獣化させて爪を少しだけ刺す
反射でソランは手を離してしまう
二人は川に落ちた

「がんばって、ソラン」

二人の口から一言だけ揃った
____________

流されているからと言って諦める二人では無かった
離れてしまわないように何とか服と服を固結する
前日の雨で流れが早くなっているからといってそこまで酷く早いわけではない
幸いふたりとも泳げるしなんとか浅瀬に流れようとしていた

「ハコ、この先に浅瀬はある!?」

「ごめん!この先のことはわからない!」

「そう・・・・っつ、あぶない!」

「えっ?」

ニーナは流れる先に岩が見え、灰高登の服を引っ張り庇うように抱きしめた


背景が一気に黒くなる
おそらく灰高登が気絶したのだろう

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背景が見えてきてどこかの浅瀬だということが分かる


暗い・・・・・けれど暖かい・・・

「がはっ!、ごほっ!・・・・はぁ....はぁ....」

口の中が土臭い、川の水を飲み込んでしまったのだろう

「......よかった......気がついたね」

ニーナは少し前に動く

意識が朦朧とする中、ニーナの顔がすぐ側に見えた
体が起こせない、全身がまんべんなく痛い

「ニーナ・・・・僕達助かったの?」

「......うん、助かったと.....思う」

灰高登は首だけを動かしてニーナの足元が少し赤くなっていることに気づいた
それが血だとわかるのにほんの少し時間がかかった

「ニーナ、怪我してるの?大丈夫?」

「....大丈夫、少し切っただけだから」

「よかった・・・ごめん、すこし眠くなったから寝るね」

「うん....いいよ」

背景がまた黒くなる




「ニーナ?・・・・ニーナ!!おい、しっかししろ!目を開けろよ!」

ここで音も途切れた
____________
ニーナがハイコドと向き合う

「これでお終い」

「・・・僕が気づいたときには病院のベットで寝ていて、母さんからは交通事故に遭って3週間位眠っていた、って聞かされた」

今ならば分かる、あれは自分がパニックにならないための嘘だったんだと

「どうだった?自分の知る限りの真実を知って」

「どうもこうも・・・ただ、ごめんとしか言えないよ。それと僕はニナの死因とかそういうのをまだ知らない」

ニーナはとりあえず落ち着いているねと言った

「なんで?」
落ち着いていると言うよりは落胆しているといった方が近い

「おそらく、これは予想ね。ソランもこのことを今思い出しているはず」

「っ!?なんで!?」

「知らない、女の子の勘・・・・・そして思い出して。『私』はあくまでハコのイメージってことを」

それがどうした、と思ったが先に考えてみる
ニーナは死んでいる、そのことをソランが思い出したら

「もう一つ、あの時私が落ちた理由がソランが押したから」

「!?」

「・・・でもそれはイタズラの域、私が死んだのは事故・・・でもあの子からしたら」

「自分が・・・殺した事になる」

ニーナはコクンと頷いた

「更に『私』はハコからしたら許してもらっている ってイメージだけど、ソランがもし自分を責めていて『私』が許していないと思っていたら・・・」

今までの説明してる時間全てが自分を責めている状態、さらに言えばソランの記憶の中からなのだから根掘り葉掘り責め立てられることになる

「だからね、ハコ・・・お願いあの子のそばに居てあげて!」

ハイコドはその言葉に、今まで無いというほどに強く頷いた

「了解!!恋人として、ニーナの『パートナー』として全力で行くよ!」

「そろそろ起きる時間だね・・・・頑張って」

暗闇が晴れていく、ニーナも消えていく

「来年、死んだ人と会える祭りがやっていたら・・・・」

「絶対呼んでね!!」

____________

がばっと跳ね起きる
今まで起きた瞬間にここまで頭がスッキリしていて何をすべきかわかっていたことがあっただろうか

「ソラン! ・・・クラァ!!!」

自室のドアノブを回す時間も惜しいと言いたげにドアを蹴破る
壁を蹴ってソランの部屋のドアを開けた






『再会と真実とパートナーロスト』
続く

____________

次は時間を遡ってソラン側のお話となります

PS.あまりにも今回の長編に合いすぎてる曲が有りました


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