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未来のネタバレ

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私には弟や両親の様に獣の耳を持ち合わせていない
母からは地球人と獣人の違いを教えられ、父からはなぜ自分に耳があるのかを聞かされた

幼かった私にはすべて理解することが難しく、家族で一人だけ仲間はずれのような気持ちになり泣きじゃくった
・・・そういえばあの時どうやって泣き止んだっけ?
まぁそのうち思い出すだろう、メモメモっと

上を見上げれば少しばかりの星と人工光の明かりが見えて
鈴虫の鳴く音を聞きながら私は思い出したいことを専用のメモ帳にメモする
思い出せないことを放っておくとムカムカしてくるのだ


「どうした、そんなところに長時間いると風邪を引くぞ」

「大丈夫だよ、この程度じゃお父さんたちも風邪引かないでしょ?」

「一般人と契約者は違うぞ、それに獣人でもなく地球人だ」

「むー、わかったわよ」

私よりも20cm以上大きく....左右で髪型が違い、顔にはお父さんの傷に似たペイントをしている男性
ソイルが私を心配してくれたのか声をかけてくれた
ソイルは私達姉弟が物心ついた時と姿がほとんど変わっていない
普通ならおかしいとか不審に思うだろうけど私達にとってはそれが当たり前なのです

「どうしたのじゃ?また言い争いかの?」

「あ、エクル」

エクルも私より身長が高い・・・・私達が生まれる前はお母さんより小さかったって聞いたけど信じられない
着物を着こなし、美人だとおもう

「言い争いではない、このような場所で考え事をしていたら風邪を引くぞと忠告していただけだ」

「なら良いのじゃがな、ソイルの言うとおり夏もそろそろ終わりじゃ...注意したほうがいいぞ?」

「もう言われたからわかっているわよ、もう」

このままだと他の人にも言われかねないのですごすごとリビングに戻ることにした
夜風は想像以上に冷たかったのか、リビングとの温度の差で一瞬身震いした
・・・・言われてよかったと思う

「それで、明日の宿題は終わっとるかの?」

「シンクと一緒にしないでよ、家でする以前に昼休みで粗方終らせて晩御飯前には終えてあります」

えっへんと胸を張る・・・・・16歳になった今でも未だまな板胸であることを自分で強調してしまい心のなかで凹む!
大きくなるもん!来年再来年にはお母さんみたいにビッグになるんだもん!
るー、と心の涙を流す

「しかし、人間とは不便なものだな。学校に通わないと技能を手に入れれないというのは」

「ポータラカ人と一緒にするでないわ、チート種族め」

「何を言う、契約した時点でニビルとのアクセスは切れている。お前の場合学校に行っていないのが原因だろう」

「ぬぐっ...」

「えっ?なになに!?エクル学校に行ってなかったの!?」

これは興味深いことを聞いた
ここぞとばかりに追い打ちを掛ける

「う、うるさい!信に教えてもらったから人並みの知識はあるわ!」

「人並みねぇ・・・よく言うよ」

いつから居たのかごく自然にエクルの後ろに信が立っていた

「ぬわぁあ!?い、いつの間に!?」

「たった今だ、気づいていないのは二人だけだ」

「まぁそこは置いといて...信、さっきのどういうこと?」

エクルがわーわー騒いでいるがキニシナイ・・・というかこういう時は子供に見えるから不思議だ
もちろん信も構わず話し始める

「いやぁ、コイツに勉強教えるのは大変だったよ・・・まぁカクカクシカジカ......というわけで俺も二度勉強していたようなものだからクラス上位に食いつけたのはありがたがったがな」

カクカクシカジカで3行分くらいの説明が有りましたがここでは省略
主にエクルの失敗談や恥ずかしいこと
聞き終えた後私は思わずエクルを見つめました

「へーほーふぅーん」

「や、やめろぉ!そんな目でわらわをみるなぁ!」

あぁ、エクルいじりは楽しい
信とアイコンタクトしながらそう思えたのです
その時ソイルが霧のようにふわぁと消えて行くのが見えて

「さて、俺はうさぎ達の様子を見て寝る」

と、どこからともなく聞こえてきたのでおやすみと一言言っておく
ふと時計を見れば日付が変わりそうな時間になっていて
明日からは朝から生徒会の仕事があることを思い出しまして

「それじゃエクル、信おやすみなさい」

とだけ言って二階へ静かに移動するのでした





ふと・・・目が覚めた
時計を見て現在時刻確認 
【AM3:00】 
よし寝よう、今日は部活は休みの日だし宿題だって珍しく終えているのだから
そう自分の中で納得しながら布団を深くかぶる

「・・・眠れん」

これは困った、妙に目が覚めている
しかも今度は腹の虫がぐぅ、となり始めた
そちらの方に意識をむけてしまうともう眠りにつくことは不可能に近く

「起きるか」

誰に言うわけでもなく俺はそう呟いて二段ベッド下のベッドから降りて背伸びをする
肩の辺りからコキッと小気味いい音がなり先ほどまであった怠さが吹き飛んでいく
そしてスルリと尻尾を具現化させて毛並みの確認
親父から受け継いだ黒いつやつやとした毛にところどころ燃えるような緋毛が混じっている俺の尻尾
この状態は俺の髪にも同じ事で不思議な事だが天然メッシュが入っているのだ

「・・・ばっちゃが赤毛だからって母さん言ってたけど、だからってなぁ」

まぁ、俺にとって柔の親父と剛のばっちゃの一族の証ということで誇りに思っているのだが
ちなみに尻尾の有り無しで瞳の色が変わるのも親父と母さんの息子の証だと思っている

スヤスヤと上側のベッドから聞こえてくる

「よく寝てるなぁ・・・いや、今回は俺が早すぎたんだよな」

姉さんの寝息を聞きながら俺は手早く上下ジャージに着替える
そして大きな音を立てないようにゆっくりと扉を開けて...閉めた

まだ日は昇っていないので(当たり前だが)
廊下の電気を付け、一階へ降りて明かりを付ける

「うわっ....」

そこで俺は異常事態であることを知る
リビング一面が紅白模様でうごめいていた
・・・いや、正確にはわたげうさぎたちが部屋から脱走したみたいだ

ぱりぱり....かりかり....
そんな音が前面から聞こえてくる


「ってぇ!?待てえ!!」

音の正体が何なのか大体わかっているので確認のため壁際でうごめいていた兎を持ち上げて確認する
そこには見事な引っかき傷と木くず

最近旅にでるようになった風花姉、・・・こいつらは風花姉恋しさに一定期間毎にこうして騒ぎを起こす
こうなってしまうと対処方法は限られてくる
風花姉が帰ってくるまで放置、これは無理だ。あと2週間は帰ってこない予定だし
ソイル兄を叩き起こす・・・これにしようと思ったが何処にも居なかった。殺虫剤でも撒いてやろうか
そして最終手段

「おーい、こっちだこっち」

俺が獣化してうさぎたちを連れ出す
こいつらはどうしてだか俺が狼化すると背中に飛び乗ってきたり尻尾にしがみつこうとしてくる
もちろん今回も獣化した途端眼の色を変えて飛びついてきた
・・・結構怖いんだよな、綿の津波みたいで

今の俺を第三者が見れば毛刈り前の羊か巨大わたげうさぎと見間違えるだろう
そのくらいしがみつかれている

「お、重い・・・・・」

潰れそうになるのを耐えながら兎部屋へ歩き出す、あと5m...4m....3m.........2......1
入った瞬間にうさぎたちを転がすように振り払い、扉を閉める!
・・・中からキーキーダンダンと物音がするが放っておく
なんで俺が夜中にこんなことをしないといけないんだ

全身に怠さを感じながら冷蔵庫の中から缶コーヒーを取り出して栓を開ける
ふと後ろから声がした

「お疲れ様」

「親父こそなんでこんな時間に起きてるんだ?」

「そりゃあれだけうさぎたちが騒げば起きるよ」

「まぁそうだよね」

親父の若いころの(と言ってもまだ35だが)写真と比べるとマッシブというか・・・ガタイが良くなっていると思う
幼い頃一度仕事の見学をした時は普段見せないような男らしさというか、強さを知った
自らの数倍の躯体はあろうドラゴンをかすり傷だけで仕留めたことがあった
しかも俺を守りながら

思えばあの時からだろうか親父を尊敬するようになったのは
・・・・ばっちゃもだけど、たしか小さめのドラゴンを拳骨で倒したからなぁ・・・たしか53だっけ?
こう考えると俺の家系は化け物だらけなのだろうか

「どうかしたか?」

「あっ...いや、この家も古くなってきたっていうか・・・ボロボロになってきたなぁって」

思わず誤魔化してしまったがさっきのは言うまでのことでも無いだろう
と自分に言い訳

すると父さんは顎に手を添えてうーんと唸り始めた

「まぁ、お前らが生まれる前からあるから・・・・そうだな、今の状態で改築してから20年くらいか」

「意外と古いんだな」

ぐるりと部屋全体を見回せば腰から下の位置が主にボロい、犯人は言うまでもなくうさぎたち
しかし昔からうさぎたちのお陰でこの店が救われてきたこともあるらしく、邪険にはできないというかもはやイタズラちびっ子軍団という認識だ

「それはそうと、もう一度寝ておいたほうがいいんじゃないのか?また居眠りで先生に怒られるぞ?」

「妙に目が覚めて眠れないだよね」

「さっきあれだけ動いたんだ、うさぎでも数えていれば寝れるはずだ」

そこは羊では?とツッコむ事をスルーしておく
時刻は【AM4:46】もう一眠りはできそうだ

「わかった、もう一度寝てくる」

「父さんは倉庫の整理するからこのままだな、お休み」

俺もおやすみ、と一言返して自分の部屋へ戻る
扉を閉めてから廊下の方から物音がしたが・・・気のせいだろう
程よい怠さだ、これならば姉さんか母さんに起こされる時間までぐっすりと眠れそうだ

瞼を閉じてこれからの事を考えるといつの間にか意識は闇の中へと落ちていった

_____________

「んっ......夢?」

一体何の夢を見ていたかも思い出せない
目覚ましの機械音で目覚めた私は私自身に潰さ...じゃなかった乗っかられている旦那さまの耳をツンツンと突く
柔らかい耳を撫でる度にそのままもう一度眠りにつきたいと思ってしまう

さぁ、もうすぐ夏も終わる
窓から差す朝日に輝く結婚指輪を眺めながらこれから先の未来へと歩いていく覚悟を改めて決めるのでした

「ハコー、起きて~朝だよ!」



おしまい
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